現代画報9月号に掲載された記事です。
 
 
清水薬剤師会理事
中央メディック 株式会社
代表取締役社長 細谷 扶二子
 

地元出身。1958年に父親が開業した『美富美堂薬品』を引き継ぐため、薬剤師資格を取得。他店で経験を積んだ後、家業に本格的に携わるように。活発に活動し、『ミトミ堂薬局』、『みとみどう薬局』、そして『三十三堂薬局』と店舗展開に成功した。

現在、医薬分業やさまざまな規制緩和により、薬局薬店に求められる要素は大きく変わりつつある。その渦中にあって地域密着型の姿勢を強め、医療機関にとっては職人気質の薬剤師がいる頼りになる調剤薬局として、患者にとっては気軽にいろいろな相談ができる場として親しまれる薬局づくりを進める細谷社長。そのこだわりに迫る。

 
対談
 

穂積 こちらは、社長のお父様が創業されたそうですね。

細谷 はい。昭和33年の3月3日にオープンしたことから、『美富美堂薬品』と名付けたそうです。私が店を継いだ当時は、『美富美堂薬品』は調剤薬局ではなく、また薬剤師の社会的地位は高いとは言えませんでした。女性の社会進出がそれほど進んでおらず、有資格者の多くが女性だった薬剤師は、資格を持っていても活用できる人は少ないという状況で……。私は、そんな現状を改善したいという思いもあり、店の拡充に努めましてね。保険薬局許可を取り、『ミトミ堂薬局』、『みとみどう薬局』、『三十三堂薬局』と店舗を増やしていきました。またその過程で、『中央メディック』を後継。店を増やすには会社組織として運営した方がいいという助言を受け、それまで携わっていたご縁から同社の代表取締役社長となったのです。今では医薬分業が進み、薬剤師の需要も増え、次第に世間にその存在が知られるようになりました。同時に、薬剤師が資格を生かせる職場も多く、良い時代になったと思います。

穂積 確かに今は、薬剤師の果たす役割は大変大きいですよね。社長のように、積極的に調剤薬局の普及に努められた方の功績も、大きいことでしょう。その代わり、現代は厳しい競争に打ち勝つ経営方針を確立するのが重要だと思うのですが……。

細谷 そうですね。薬を扱う店舗は、保健調剤を扱う調剤薬局、一般的な薬局、地方に多い薬店、そして置き薬で知られる配置薬を扱う薬局の4種類に大きく分けられます。私共は保健調剤を扱う薬局。病院との連携がとても大切になってきますから、当店では特に、薬剤師として働くスタッフの育成に力を入れています。職人気質の薬剤師、と言いましょうか。自分の信念と強い責任感を持って行動できるような薬剤師を育てたいと思っています。また医師との連携もしっかりと取り、「この先生であれば医薬の専門家としての私共を存分に生かしてくれるだろう」と思われる医師の方々と共に、信頼関係やコミュニケーションを育みながら、患者様に安心してご利用いただける店舗づくりに努めているんですよ。

穂積 そこまで徹底されて患者さんと医師との信頼関係を築かれている薬局は、少ないでしょうね。

対談光景細谷 そうですね。私が現在のスタイルを築くようになったきっかけは、仕事を通してたくさんの医師の方々と出会ったことなんです。先生方の、医療に対する考えや姿勢を身近で見てコミュニケーションを深めるにつれ、私自身も「もっと地域密着型の活動をしたい」と強く思うようになって……。また、これも仕事を重ねて見えてきたことなのですが、実は、患者様の中には医師に本当のことを言えない方も多いのです。「良い患者」であろうとする余り、医師の質問に模範的な受け答えしかできなかった方が、薬を受け取る段階になって薬剤師に相談を持ちかけるという場合も、少なくありません。薬剤師は患者様が抱えている不安や健康上の悩みを医師に伝えるなどして、より良い治療を受けられるようにするのが、最も重要な役目。医師と患者様の架け橋としての役割を常に意識すべきでしょうし、患者様の言葉に十分に耳を傾け、安全で確実な処方をすべきだと、私共は考えております。薬局にとって最も大切なのは病院との信頼関係であり、医師との良好な関係を築くことでもある。そうして互いに良きパートナーと認め合うことで、より良い医療の提供を実現できるのですから。

穂積 そして患者様一人ひとりの人となりを知ることが、より一層充実した医療の提供につながるわけですね。

細谷 はい。日常生活や生活習慣までをも含めた健康相談は、ある意味、きわめてニッチな性格を持つ業務であり、それには薬局などが最もふさわしいように感じます。私共では漢方薬も扱っていますので、病院で相談されたことだけでなく、慢性的な体調不良の回復などもサポートしていきたいですね。

穂積 病院よりも身近にある健康相談のできる場というのは、地域にとってなくてはならない場所。これからも、地域の方々の健康サポーターとして、頑張って下さい。本日はありがとうございました。

 
独自の工夫と横の連携を生かした展開で、医薬分業を支える
 
▼「人に優しく、自分に優しく、社会に優しく」をモットーに医師との信頼関係を築き、地域医療の充実に努める細谷社長。社長が目指すのは、従業員自身が患者に慕われ、信頼される薬局だ。その信念を薬局づくりにしっかりと反映するためにも、社長は薬剤師の育成に力を入れている。
▼「人が人につく、そんな薬局でありたい」その考えをもとに、社長は自らが理事を務める清水薬剤師会に所属する調剤薬局とも連携し、協力態勢を確立することで地域医療の向上に努めている。独自の工夫としては、『中央メディック』が経営する薬局のひとつでは、薬の飲み忘れのないよう、服用時間を書き込むためのスケジュール表を作成。加えて日常生活を考慮した生活習慣の改善指導を行っており、特に高齢者からは好評を博しているという。

▼「優しい」という言葉は目新しいものではない。しかし、その言葉を形にして実行するのは難しい。誰もに受け入れやすい形で、さらに薬局として真の優しさを考えるという姿勢により、『中央メディック』は地域の医薬分業を支えている。
 
対談を終えてgenn
「医薬分業は今はかなり進み、独自の特色を持つ薬局・薬店も目立つようになりました。医師と薬剤師は、独立した道を歩んでいるように見えますが、より良い医療の提供のためには常に情報交換を行うことが不可欠。そのためには医療の現場と薬局の連携が重要であるということを、細谷社長のお話から感じました。進んだとは言っても、医薬分業はまだ過渡期。理想的な医薬の在り方を探る道のりは、まだ終わっていません。私自身も患者となりうる当事者として、果たせる役割について考えてみたいですね(穂積 隆信氏・談)」